脳内ラブレター

愛が重い

本格朗読劇 極上文學「春琴抄」

「秀麗な音色。妖艶な日常。二人は盲目。」

 キービジュアルは目を閉じて三味線を弾いてる女性に男性がすがりつきながら血の涙を流してて、もうこの2人がただならぬ関係なんだなと思える。
今回の極上文學の公演のキービジュアルの画像がTwitterで流れてきて、中村明日美子先生の目を惹くイラストとキャッチコピーがすごく印象的だった。

極上文學シリーズを見てみたいと思ったし、弥次喜多や烈!バカフキの配信を見てタイムリーだった藤原さんを見たいな〜と思っていたり、2.5次元系の舞台でしか見たことないキャストもいたり、何より推しがいない作品でここまで惹きつけられる何かを信じて、吸い寄せられる様に大阪公演初日のチケットを購入しました。

 

 作品を知らない状態で観れるのは1度きりだと思い、原作は見ずに観劇。
極上シートで見たのですが、ステージと距離が近くて少し緊張しているときにロビーから「ホーホケキョ」と鳥の声がして、なんだろうと思ったら具現師と呼ばれる方々が鳥笛を吹きながら客席を動きまわってました。作中にでてくる鶯がでてくるからか。なるほど。
具現師の方々が時々立ち止まって着席している人に何かしているなとジーっと見ていたら、どうやら折り鶯を渡してたみたいです。私もちゃっかりいただいちゃいました。

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風情があるな〜と思ったらスーパーマリオのBGMやサンバ風に鳴きながら踊りだしたり、かなり個性的な鶯5匹たちだった(笑)笑わせてもらったおかげでリラックスして観劇することができました。

 

朗読劇と銘打ってはいるけれど、座って読みあげることはなく、いつも見る舞台のように役者たちは動いていて、それに合わせて奏で師さんがピアノを弾いているのだけど、SEじゃなくて生音だったのって初めてだったかもしれない。ピアノだけだけど、すごく体に響くから登場人物の感情が伝わるのを感じた。

あと、春琴や鶯(天鼓)は着物(鶯は違うけど)がすごく綺麗で動くたびに見とれてしまっていた。具現師の方々が使う小道具も綺麗だった〜。とはいえ、目と耳の刺激と話の壮大さに圧倒されてマチネは呆然としながら見てた。

 

「鵙屋春琴伝」という小冊子を「私」が、三味線奏者の春琴と丁稚の佐助の関係性を第三者の視点で紐解いていくというお話。
春琴は盲目でありながら天性の三味線の才能と美しさを持っているけれど、わがままが多く気丈に振る舞い、佐助にすべての世話を任せているような人。幼少期は目が見えていたから手に持っている本を見ながら動いているのだけれど、目が見えなくなってからは本も自分では持たずに他の人たちに本を差し出してもらって、本に手を当てて話す。むしろ差し出されて、の方が正しいと思う。春琴の美貌や立ち振る舞いに魅了されて佐助はもちろん、鶯の天鼓も弟子の利太郎も私もそして客席もだんだん春琴という存在にに心惹かれてしまう。

春琴が佐助に手を引かれて三味線の稽古へ出向くときに客席に降りて実際に歩いていく場面があるのだけれど、ピンスポに照らされた春琴役の伊崎さんが美しすぎて男性なのを失念していました。利太郎が春琴とすれ違って振り向くのだけれど、そりゃ振り向くわと納得。

佐助は世話だけじゃなく三味線も嗜むようになり、春琴と師弟の関係になるけどその稽古も厳しくて泣きながら稽古を受けるような人で、この時は気弱なお兄さんだな〜と思っていたのだけど、だんだんあれ?と思うようになってくる。例えば春琴の足を拭いてあげるだけ動作なのに、執念を感じるんです。すごく念入りにゆっくり拭いていて佐助役の藤原さんの表情も穏やかなんだけど、目がトロンとしているのが見えてしまったのだけど、それが綺麗だなと思えている自分もいて首筋がゾワッとした。

その後佐助は春琴のために目をついて盲目になってしまうのだけれど、佐助は春琴のために厭わずしたわけで、春琴もあらわにはしないけど喜んでいて、当事者からしたらハッピーエンドなんですよね。唯一利太郎が「そこまでしたのか」と言っていたけれど、そこに至る佐助の行動に驚きもあるけど納得する自分もいて。気持ちが両極端の位置に着地してしまって心が穏やかではなかったけど、佐助が「わたしは不仕合わせどころか、この上もなく仕合わせでございます。」言えば「もうええ何も言うな」と答えた春琴を見ていたら言葉で言い表す境地はとっくに超えたんだなと思いました。重かったけど、心は晴れやかだった。

 

以下、見たキャストさんの感想

春琴
伊崎龍次郎さん
本当にお綺麗でびっくりしました。幼少のおてんばな口調がだんだん大人になっていっってぴしゃっと言い放つ姿がとても凛としていて美しかったです。
マチネはしゅんとしていたけれど、ソワレでは脂が乗ったのか嬉しそうに佐助を折檻していて不条理な美しさだなと思っていた。

佐助
藤原祐規さん
普通じゃない役をやらせればドンピシャだと思ってます(笑)
常に春琴を優しく見て彼女を立てていたけれど、時々蕩けそうに見つめる表情がとても素晴らしかったと思います。お稽古の場面でマチネでじっと堪えていたけど、ソワレで涙を拭う仕草をしていて、細かく変えるんだなと驚きました。
赤槇コーナーのはっちゃけぶりがすごい。「もう一回遊べるドン!」「ちゅっちゅちゅー!」


松本祐一さん
春琴が好きすぎて他の人に当たりが強い天鼓。とくに利太郎には弾き飛ばすんじゃないかってくらいひどかった(笑)春琴の性格を引き継いでるような印象でした。
鶯の場面では腕をはためかせていたんだけど、腕が長いから照明当たるとすごい綺麗だった〜。あとパンプの鳥笛くわえてる写真がドンピシャで好き。

桝井賢斗さん
松本鶯は当たりきついけど、桝井鶯は佐助のことを見守っているような印象。春琴の表にでることのない優しさは彼が担っていたのかな。首から上の動きと目線が鳥だな〜と思いながら見てました。
赤槇コーナーの回答でキャストには不思議がられてたけど面白かったよ。「エスニック料理みたいだね!」

利太郎
足立英昭さん
利太郎は放蕩息子であったけど、放蕩息子がすごい似合ってた…(褒めてる)
お顔立ちはキリッとしているけど、利太郎の間抜けな雰囲気が出ててちょっと憎めない若旦那素敵でした〜。

富田翔さん
アバレブルーだ!※雑な知識
客降りのときに具現師さんにちょっかいかけたのを見て「面白いお兄さんだ!」と思って見てました(笑)でも春琴の稽古後の「覚えてなはれ」がすごいかっこよかった。あれは犯人だった。


大高洋夫さん
セリフ回しを聞いていて、ゴシップが好きそうな下世話な感じだな〜と思ったらパンフレットの役の写真も眼光鋭くて、本当にそうかもしれないと思いました。
赤槇コーナーを楽しんでいて、赤槇さんに対する当たりが強かった(笑)

川下大洋さん
大高さんと比べると穏やかで、理性的な私だな〜と思った。ハンチング帽がすごい似合っている。同じく赤槇コーナー楽しんでて、ウキウキで登場してたのがつぼった(笑)

 

DVD予約したので、見れなかったキャストさんや配役は映像で楽しみます。

作品の甘美さにそそられるように観劇したけど、見に行ってよかったなと思いました!原作も買ったので、もう少しこの世界に漂っていようと思います。